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真を撮るには低軌道衛星を使用する)、資源探査衛星、NNSSのような航海衛星など地球面から800〜1000?程度の低い高度で地球全体の上をくまなく通る衛星軌道があり、これが極軌道の低い円軌道である。後に述べるCOSPAS/SARSATの捜索・救助用の衛星は、このような軌道の衛星であるというよりは、この軌道の衛星に相乗りをして運用されているものといえる。
軌道高度1000?程度の円軌道の衛星は、前節の式からも分かるように、地球を1時間40分程度で一周するので、その間に地球は経度にして20数度自転する。このような衛星は、最低仰角を5°とすると、緯度によっても異なるが、中緯度で経度にして50数度の幅の地域から見えることが前節の式から求められる。したがって、同じ衛星が約1時間40分おきに2〜3回上空を通ることになり、地球の裏側の軌道を合わせると、1日に同じ衛星が、4〜5回見えることになる。システムがよく配置された4衛星から構成されると、地球上のすべての点で、1日に10数回以上は衛星が上空を通るので、COSPAS/SARSATシステムでは、その都度、遭難通報が地上に伝達され遭難位置の測定が行われることになる。
人工衛星からの超短波とマイクロ波の伝搬
通常の実用衛星は電離層よりも高いところにあるので、衛星からの電波は図7・10に示すように電離層と対流圏を通って地球面に達する。これらの電波は、すでに述べた通り、短波までの周波数は電離層を突抜けることはできないので、使用周波数は超短波より高い周波数の電波に限定される。これらの電波は電離層と対流圏を通る間に次のような効果を受ける。

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(a)電離層と対流圏内での電波の屈折
この効果は、図7・10のように電波の経路が曲り、その伝搬距離が伸びることになるが、通信の場合は空中線の指向方向が少し変わり、電波の伝搬遅延が少し増える程度の影響に止まるが、衛星航法や衛星利用非常用位置指示無線標識のように位置の測定に衛星と電波を使用するシステムでは、その測定位置に誤差を生ずる原因になるので、普通は、電離層のモデルを作って補正をしている。電離層内では、この距離の変化は、電離層内で電波が出会う自由電子の総数に比例し、電波の周波数の自乗に逆比例し、対流圏内では、そこの温度、湿度と気圧が影響するが、電波の周波数には無関係である。
(b)ファラデー回転
電波が電離層を通過するときに、ファラデー効果によって電波の変波面が回転する効果で、電波の周波数の二乗に逆比例して減少する。この効果は、地上局で縦と横の偏波でべつの送信をするシステムが影響を受けることがある。

 

 

 

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